
概要
「LignoSat」は、地球環境への負荷を低減し、持続可能な宇宙開発を実現するために生まれた、世界初の木造人工衛星です。木材という自然素材を宇宙開発に活用することで、宇宙ごみ問題の解決や資源の有効活用に寄与します。木材は燃焼時に有害なデブリを残さず大気圏で燃え尽きるため、環境への影響を最小限に抑えることができます。

構造
木材の加工と宇宙環境への適応には、伝統的な木工技術を持つ「黒田工房」の協力を得ています。特殊な加工技術と先端材料を組み合わせ、宇宙空間での極限環境にも耐えうる木材部品を開発しました。

LignoSatを支える基板たち
LignoSatにはさまざまな役割を持つ基板が搭載されており、それぞれが協力し合いながら衛星のミッションを支えています。以下では、それぞれの基板の特徴をご紹介します。 FAB (Front Access Board) 衛星の電力システムを管理し、外部との接続を処理する基板です。また、衛星全体の状態を監視し、電力系が正常に動作しているか確認します。 OBC/EPS Board (Onboard Computer & Electrical Power System Board) 衛星のデータ処理を担う「頭脳」と、電力供給を制御する「心臓」が一体となった基板です。衛星全体の動作を統括する重要な役割を果たします。 COM Board (Communication Board) 地上局との通信を行う基板です。展開可能なアンテナを使い、地球とのデータのやり取りを担当します。衛星の「通信士」といえる存在です。 MISSION Board 宇宙空間での木材への影響を調べるための実験データを管理する基板です。木材構造の歪みや温度変化などを測定し、研究の基礎となるデータを収集します。 RAB (Rear Access Board) 木材の温度や地磁気データを測定する基板です。宇宙の過酷な環境下での測定を行い、衛星が正しく機能しているかを見守る「観測者」のような存在です。 BPB (Back Plane Board) 各基板を電気的に接続する「ハブ」として機能します。すべての基板がスムーズにデータ通信を行えるようにする、縁の下の力持ちです。 Solar Panel 太陽光から電力を生成する基板です。衛星の活動に必要な電力を供給し、全体を支えています。

タイムライン
- 2019年:プロジェクト始動、基礎研究開始
- 2020年:黒田工房との技術提携、木材素材の選定と加工
- 2021年:試作機の製作と地上試験の実施
- 2024年4月:打ち上げ準備完了、各種認証取得
- 2024年12月9日:国際宇宙ステーションからの放出完了
- 2025年4月3日:LignoSat大気圏再突入・運用終了
連携、協力体制にある企業
本プロジェクトは、「住友林業」との密接な協力のもと進められています。住友林業の持つ豊富な森林資源管理ノウハウと、木材の特性を最大限に活かす技術力が、LignoSatの開発を支えています。
実績について
- 2023年:第67回宇宙科学技術連合講演会にて研究成果を発表
- 2024年:第68回宇宙科学技術連合講演会にて研究成果を発表
- 2024年:「ウッドデザイン賞 2024」奨励賞(審査委員長賞)
- 2025年:令和6年度 京都大学総長賞
- 2025年:林野庁「令和6年度 森林・林業白書」掲載
- その他、多数の学会発表・メディア掲載などの実績有
世の中に対するメッセージ
私たちは、地球と宇宙の未来を見据え、持続可能な技術革新に挑戦しています。「LignoSat」を通じて、自然と調和した新しい宇宙開発の形を提案し、次世代に豊かな環境と可能性を残すことを目指します。