Why wood?

これまで,宇宙空間で木材が利用されたことはほとんどありません。 なぜ,私たちは木造人工衛星を開発しているのでしょうか。

1. 再突入時にアルミナ粒子が発生しない

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(提供:NASA)
(写真はLignoSatのものではありません)

近年、宇宙ビジネスの活性化により、大量の人工衛星が打ち上げられています。 しかし、これらの衛星が環境問題を引き起こす可能性が指摘されています。 その環境問題の原因となるのが、大気圏再突入時に発生する「アルミナ粒子」です。 地球低軌道を周回する衛星は、その役目を終えると大気圏に再突入して燃え尽きるように設計することが 国際ルールで定められています。 しかし、現在の衛星のほとんどはアルミニウムなどの金属で構成されているため、 再突入時に完全に燃え尽きることはなく、酸化アルミニウム(アルミナ)などの微粒子として 大気中に長期間浮遊し続けるとされています。 このまま人工衛星の数が増え続けると、大気中の微粒子の数も増え続けます。 そして、それらが太陽光を反射したりオゾン層と相互作用を引き起こしたりすることによって、 深刻な環境問題が発生することが懸念されています。 しかしながら、私たちが現在開発している「木造人工衛星」であれば、 再突入時に発生するアルミナ粒子を大幅に減らすことができます。 そこで私たちは、「持続可能な宇宙開発」の実現に向け、木造人工衛星の開発に取り組んでいます。

2. 電磁波が透過しやすい

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木材は電磁波をよく通します。 したがって、アンテナや電磁波を用いる実験機器などを内蔵することができ、 衛星の構造を単純化することができます。 特に、私たちが注目しているのは「アンテナの内臓」です。 現在、超小型衛星(CubeSat)で多く用いられている「ダイポールアンテナ」は、打ち上げ後に宇宙空間で 展開作業を行う必要があります。 そのため、この展開作業に失敗し、運用できない衛星が多くありました。 この問題を解決しようと、私たちは展開不要な「パッチアンテナ」を衛星に内蔵しようと考えています。 これにより、超小型衛星のミッション成功率を向上させることができると考えています。

3. 月や火星で生産可能な資源となりうる

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(Generated by Copilot)

世界各国で、月移住・火星移住を実現しようとする機運が高まっています。 これらを実現しようとするとき、必要な物資をすべて地球から運ぶのはあまりにも非現実的です。 したがって、現地で資源を調達する必要があります。 木材であれば、現地で植樹することによって繰り返し生産することができます。 しかし、木材を月や火星で利用するためには、「宇宙環境が木材の物性にどのような影響を与えるか」を あらかじめ理解しておかなければなりません。 そこで、木造人工衛星を打ち上げることによって、宇宙環境が木材の物性に与える影響を調査しています。